此処は有機に明滅する電灯に照らされた『ボク』の影です
# アニムス
「アニムス」
助手席に座っている彼がおもむろに口を開いた。
彼の選曲したジャズがスピーカーから湧き出し車内に満ちている。
車の脇では朝日を精一杯その身に受けた海が輝いている。
いつもなら眠っている彼は、何かを見定めようとでも言いたげに凝っと前を向いていた。
「ん?」
僕はちらりと彼に目をやってから視線を前に戻した。
「昔、生物には生命の源があると信じられていた、それがアニムス」
「それがどうした?」
「いや、何でもない。ふと頭をよぎっただけ」
そして彼は「少し眠る」と腕を組むと、深く座席に身を預けた。
「あにむす」
僕は独特の響きを口の中に転がしてみた。
乾いた音が車内に響いてジャズが止まる、目前の信号が赤に変わる。
僕はこれ以上にないほど慎重に車を止めて窓の外を見た。
新しい太陽が己の存在を誇示しようと燦々と輝く。
海は波をもって太陽に応じる。
僕は太陽の中で焼かれるアニムスという存在を想像した。
捉えどころのない存在が身を焦がされながら歓喜の声を上げている。
そして僕ははたと気付く。
確かにイカロスは堕ちた、だが彼の行為は至極正常なのだ・・・。
背後のクラクションが僕を我に帰させた。
サイドブレーキをゆっくりと下ろし車を進める。
クラクションで目を覚ました彼はテープを逆さにした。
「いい天気になりそうだ、午後には地面も暖まるだろ」
彼は、そうか?と眩しそうに外を窺うとまた眠りに堕ちた。
スピーカーからは中性の太い声が『高みを望め』と唄っていた。
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